過去に治療を行った症例報告です。治療部位毎に経緯などをまとめています。左側のカテゴリ選択から治療部位を選択できます。
70歳代の女性の患者さん。
以前から、腰はよく痛くなったが、赤い―マークの脚の部分に初めて痛みが出たと言う事で来院されました。歩きながら、殿部の筋肉を押さえると痛みが和らぐそうです。中殿筋の後方線維などをリリースすると、訴えられる痛みがなくなりスムーズに歩く事が出来るようになりました。
この患者さんは、以前は京都に住んでおられたそうですが、今は離れた〇県にお住まいのようです。数日後には自宅に帰る予定だそうです。自宅近くにはいくつも医院や病院、治療院があるそうですが、どこへ行ってよいのか分からないと仰ります。こちらも、MPSを理解して治療してもらえる施設をしりませんから、どこへ行けばよいか聞かれても困りものです。
ですから、私の院に来られる患者さんには、痛みの事を少しでも理解してもらい、自分で治療戦略をたて易いようにする為に、MPS、トリガーポイント、筋痛、慢性痛症 etc についての資料をお渡しするのですが、資料の作り方が悪いのか?世間一般で行われている構造破綻モデルに基つく診断と、私の話す内容がかけ離れているためか?なかなか理解してもらう事ができません。もちろん、無理強いするつもりはありません。
この方も、地元に帰って痛みに襲われたらどうしようと考えると、不安でいっぱいになり、毎日あった便通がなくなったそうです。痛みをすぐに除痛できても、負のインパクトは、人によってはなかなか消える事はありません。
このような立場の患者さんでも、痛みについて知ろうとしない患者さんのほうが圧倒的に多いかもしません。
同じ事をお話しするのは、治療家として相当なエネルギーも要りますし、中には胡散臭く思う方もおられるでしょうが、MPSや慢性痛症の事が世間で少しでも理解されるように、コツコツと出来る範囲で地道にやっていくしかありません。
カテゴリ:症例報告 ,坐骨神経痛 脊柱管狭窄症
ebara / 2010年07月26日(月) 16:37
この時期、ぎっくり腰の患者さんが増えるように思います。
朝から、ぎっくり腰を起こした中年女性の患者さんが2名。大きな外力が加わった訳でもなく起きたぎっくり腰は、自覚症状がないだけで、機能が低下した筋肉がたくさんあり、触察すると感作している筋肉が、罹患筋以外にもあることがすぐにわかります。二人とも、一番辛いのは靴下を履く動作が困難。
一人目は鍼治療で対応させていただきました。前屈以外に側屈困難もあります。
院にある一番細い鍼を使い、多裂筋と腰腸肋筋の移行部と腰方形筋、殿筋部分は鍼施術。
細く短い鍼では大腰筋と腸骨筋は、治療が困難な為、仰向けで同筋肉を徒手治療しました。それでも、まだ運動制限のある部分は、等尺性収縮を利用して可動域を確保。
完全に除痛は出来ませんでしたが、治療後の動作や痛みの確認では合格点を出せるレベルです。
なるべくリバウンドが少ないように置鍼する時間を20~30分確保します。施術後、鍼の跡が痛ければ、何故そうなるかお話して、痛み止めを飲むようにアドバイスしますが、今までに鍼の跡が施術前よりも痛くなったという、患者さんからの報告は1回あっただけです。
どちらかと言うと、治療直後よりも次の日に楽になっているケースのほうが多いように思います。
もう一例は、徒手のみで対応。
仰向けで、大腰筋、腸骨筋を処理した時点で、動作時痛がかなり改善。今度はうつ伏せで、多裂筋と腰腸肋筋、殿筋部分を処理。
動作時痛を確認してもらうと、前屈時痛は取れましたが、今度は後屈時痛が辛いと訴えられます。この方は、問診時に立位より座位では疼痛がマシになりました。細かく診れば、ハムストリングを掴んで前屈してもらうと動作時痛が楽になります。そこで、ハムストリングを等尺性収縮を利用して緩めてみたところ、あらゆる動作が楽になって帰って貰う事ができました。
80歳代の女性の患者さん。もう随分長いおつきあいです。
すごく、自分の身体について繊細な方で、いつも検査の結果の評価を医師だけでなく、私に聞いてこられます。先日も来院された際に、2日程前に歩いていると心臓がビクッとなって、胸が痛くなったと仰ります。それが何回か続いて、心臓が止まらないか不安だとも仰ります。症状が出たのはその日だけだったそうで、特に息苦しいなどの症状はなかったそうです。
誰でもできるトリガーポイントの探し方・治し方のP133に不整脈とTPにつての記述があります。
患者さんの性格傾向や、色々な検査結果のデーターを聞かせてもらっているので、TP関連症状を疑い、大胸筋ではないですが赤いマークの部分。
胸骨と右肋骨下接合部、やや右よりを探ると、著名なジャンプサインがありました。そこを虚血圧迫法を用いて直接リリースしました。今日来院された際には、ジャンプサインも消え、訴えられた症状も一切でていないと言う報告を受けました。
もちろん、安易にTP,MPSと考えずに、気になる点があれば除外診断を優先してもらうのは、言うまでもありませんね。訴えられた症状がTP関連症状だったのか?
長年の信頼関係が効を奏した(プラセボ)かは分かりかねますが、備忘録として書き留めておきます。
カテゴリ:症例報告 ,自律神経失調症 その他の症状
ebara / 2010年07月08日(木) 12:17
70歳代の男性の患者さん。
この10ケ月の間で、軽い脳梗塞、顔面神経麻痺で二度の入院。主訴は脳梗塞で悪くなったほうとは反対の左肩の猛烈な痛みで、処方される痛み止めの薬も殆ど効果がない。
話を聞くと主訴は脳梗塞を患った後、去年の11月くらいから痛くなり、その間、病院でリハビリを週2~3回継続して受けていたそうでが、全くと言ってよい程効果が見られないので、1週間位前から治療にお見えになっています。左肩は拘縮が酷く、体幹から40度程くらいしか外転できない。他の動作も大きく制限されている。
いわゆるインピンジメント症候群+MPSと言うような病態でしょう。左肩の痛みは、脳梗塞で悪くなった方の手をかばっていたからか?
大きな病気を二回もして辛い思いもしたが、しかし周りには痛みや病気を理解されないストレスか?
痛みには色んな事が複雑に絡みあうものですから、単一的な原因を指摘はできない方が多いものであるが、患者さんが訴える痛みに耳を傾けて、理解してあげるだけでも患者さんは救われる事も多いものである。
肩の痛みは夜間痛も酷く、夜中に何度も目が覚める。肩周りは過敏性が増して、少し触るだけで痛みを訴えられる。話によると烏口突起付近から、関節内に注射針を入れ、針をグリグリ回しながら行う注射を3回したが、全く効果がなかったそうです。あまりの痛い注射に二度と注射は御免だと仰ります。
鍼も、注射のイメージが強く頑なに拒否されていましたが、あまりにも痛そうなので、徒手治療では効果が薄いと判断して、なんとか説得して一度だけ鍼治療を施しました。置鍼を10分くらいしていると、肩の痛みが指先まで広がり同じ姿勢が苦痛になってきたので、抜鍼。いわゆる五十肩では、同じ姿勢をしていると辛くなると言うのはよくある事です。その後、鍼をしたところを丁寧に徒手治療を加えました。
その日は、夕方まで鍼をした跡が少し痛かったが、その後は痛みがスーッと消えて夜間痛で目を覚ます事もなかったそうです。
今は初見時の肩の過敏性も無く、夜間痛で目が覚める事もなく、徒手での治療後は夕方まで楽に過ごせるそうです。最初の鍼の効果は今も持続しているように思えます。
私の個人的な見解では、インピンジメント症候群は構造の問題と言うよりも、どちらかと言えば棘下筋がうまく機能していない問題の方が大きいように思えます。
運動連鎖から、罹患筋を割り出して、単純な治療を加えただけで、効果があった訳だから痛みの本態はMPSと言えるでしょう。